我家的[スプリングエフェメラル] 2009年3月21日 茨城県 関東では桜の開花と前後してスギカミキリが出現します。 里山のスギで比較的簡単に探せるカミキリですが、大型で美しい斑紋があり、 時に消失した精悍な個体もいて、我家のスプリングエフェメラル(*)かも。
(*)スプリング・エフェメラル:Spring ephemeral:もともとカタクリや福寿草など春に花を咲かせ、葉が終わると次の花まで地下茎で生きる花の総称らしいのですが、昆虫ではギフチョウやビロウドツリアブなどがこう呼ばれたりします。 |
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花の便りも届く今日この頃、同好のみなさまもあちらこちらでご活躍されているようです。 さて、我家の怪しい桜も花を開きはじめました。 |
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毎年のようにムシにやられながらも実をつけるブルーベリーもほころびはじめました。 |
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というわけで今日は我家的スギカミキリの新産地を求め、やって来ました茨城県某公園の駐車場です。 混んでいます。満車で枠外や路駐している車もありましたが、ちょうど空きスペースができたところらしく、無事駐めることができました。 |
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冬場に痕跡を確認しに来たころは人影もまばらでしたが、穏やかな陽射しを浴びてレジャーシートを広げる家族連れや、テニスコートではサークルがワイワイがやがやとイベントらしきを催しています。 |
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で、私たちが遊ばせてもらう所は、花もまだ咲いていないためか、ありがたいことに人影も疎(まば)らです。 数日前の雨風のためか、落ち枝がやけに目に付きます。 |
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もともと弱っていたのでしょうが、こんな太いものも落ちていました。 イヌザクラ?それとも・・・樹種は特定できません_| ̄|○ 少し折ってみたのですが、乾燥がひどくキクイムシの跡を見掛けた程度でした。 |
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こちらにはスギが根元から倒れてしまっています。 スギカミキリによる食害が進み、強風に耐えられなかったのでしょう。 新しい羽脱口が見られたので、潜り込んでいないか探ったのですが、得られませんでした。 |
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スギカミキリの羽脱口です。 幅1センチ程の横長の円で、食害が始まると特定の樹にこのような穴が集中して見られるようになります。やがて、樹皮裏は朽ちて、縦長の空洞ができます。樹勢はますます弱まり、食害も最終段階になると、スギカミキリたちも付近のスギに移ったりしますが、最終的には立枯れてしまいます。 |
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新鮮な羽脱口です。 縁がぎざぎざしており、中も樹皮と同じような赤茶色なのですぐそれと判ります。 こんな穴が多く見られたら、そのスギの樹皮裏や、根元に潜んでいると思って間違いありません。 |
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食害を受けやすいのは、自然度の高い山の中では無く、このような明るい公園や里山、下生えもなく乾燥しているようなところにあるスギです。 ここでは根元も整理されていて、隠れる場所がありませんので、樹皮裏密度が高いはず。 ところが、手の届く範囲になかなか良い(浮いた状態の)樹皮がありません。 探すことしばし・・・ |
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[いたよ、無紋!写真撮れるよ] 採り手がいきなり黒化型を出してしまいました。 [おおぅっ!幸先良いなぁ][でも、捲りやすい樹が少ないよなぁ]などと良いながら、ありがたくコンパクトでパチリ! この美しい♂が、ここでの“初スギカミキリ”となりました。 |
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スギカミキリ黒化(斑紋消失)型の室内写真です。 このような無紋型は時々見られますが多くはありません。無紋型が集中して得られるポイントもあるよ!との情報もいただいており、地域や場所によって密度は異なるようです。つくば野では初めてでした。
> 拡大画像 |
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その後、この時期としては順調に見つかったのですが・・・ |
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♀がなかなか見つかりません。 昨日栃木市でペアを確保しているので、ずっと南に位置するつくば野ならもっと多くが出ているはずと思ったのですが、単純に気温の高低だけでなく、土地によって出現のタイミングは違うのでしょう。 > 拡大画像 |
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ヤノナミガタチビタマムシ 小さな小さなタマムシですが、ケヤキやスギの樹皮裏には普遍的にいるようです。 |
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ウバタマムシ 成虫越冬の認識が無く驚きましたが、成虫のまま越冬することもあるそうです。 > 拡大画像(別アングル) 前にも☆になったウバタマが出てきたことがありましたが、妙に柔らかく[☆になっても固まらないままでいるのか??]と不思議に思って終わってしまいました。越冬に失敗した個体だったのでしょう。 |
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スギの樹皮裏にスギカミキリのエリトラ(翅鞘)やダンゴムシ、蛾の蛹などが固まってありました。 サシガメやクモなどにやられてしまったものでしょうか?つまりゴミ箱? スギカミキリの羽脱口に、クモやヤニサシガメが潜んでいるのを良く見掛けます。だからといって単純に犯人だと決められませんが・・・ んんん〜ん、謎であります。 |
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普通種で、しかも里山など自然度の低い身近な環境に多発する、 いわばありふれた存在のスギカミキリですが、 春と、そして本格的な野外でのカミキリシーズンの到来を告げる 美しいカミキリムシでもあります。 身近ですが、夜間活動型で日中は樹皮裏などに潜んでいるため 意識して探さなければ目にすることはできません。 人々が花見に集うその裏で、ひっそりと夜を待っています。
なかなか趣のあるカミキリムシと言えそうです。
今回は、我家では採集履歴の無い公園での確認となりました。 いると判っていても、やはり確認できた瞬間は心躍ります。 |
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